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林 レイナ 


夜明けのコンビニの前で。
何か新しいことを始めようと、なかば無理やりに飛び出して数週間。
家もなければ、仕事もない。男もいなければ、金もない。
街を、飲み尽くし、まさに私、途方に暮れていた。
どうっすかな?これから。
まともな所で眠っていないからだろう。身体がどうしようもなく疲れて、
世界は東京都指定のゴミ袋をかぶったように、ぼんやりベールを被って向こうで揺れている。
おう、ゴミ袋を被っているのは、この私のほうなのかもな。

「絶望的だな。」口に出してみて、ぼんやり空を見上げると・・・見えたんだな。
希望の光が。白々しく明けてゆく夜明けの空に、一筋の飛行機雲が。
その廻りを戦闘機のように飛びまわる数匹の白い鳥が。
確かに見えた。気がするんだな。

過去も未来も今なんだ。
だって私の手のひらには、今が、ここにあるんだ。
そう思った途端、生きているという実感が、これからを生きていくという希望が
じわじわと身体に沸いてきた。
ここから始まることだけを始めよう。
コンビニのゴミ袋に、缶コーヒーを投げ入れた私は、
もう、新しい歌を口ずさみながら、駅へと続く坂道を登っていた。



曽谷 コウヘイ 


今やMMZ RECORDSの倉庫と化している我が家のキッチンであるが、
「ひこうき雲e.p.」のプレス盤が届くと、とうとう歩くのも一苦労な状態になってしまった。

しょうがなくダンボールまたいで焼そばなんか作る途中、
ふとレイナの日記を思い出し「フラミンゴ☆スタイル」で料理してみたら
最近行き詰まっていた自分の料理がおいしくなった。
その時、ひこうき雲にひとすじの希望を見い出したレイナの気持ちが少し理解できた気がした。

希望なんてささいな事からいくらでも見つけだせる。自分次第でね。

発売おめでとう、みみずくず。そう自分で言いたくなる作品です。



前田テルユキ


いや〜ポップです。明るいなー「ひこうき雲e.p.」。
オレってこんなに楽しいやつだっけ?なんつーくらい。

しか〜し、「I KNOW あるの 知ってるんだ」のなんとも大胆なアレンジ。
3回聴くとわかります。ポップじゃないです。ヘンタイです(笑)。
しかも「楽しい事をしよ〜」と繰り返す明るく歌うそのメロディーがなぜか切なげ。
変なの。

そしてさらに5回聴くとわかります。

ペンを片手に「あっち」へ行ったり来たりしているレイナの姿が。
ヘンタイなのに聴き流せるアレンジを引きこもって考えるコウヘイの姿が。
歌メロ気にせず面白い事したろう、と狙う前ちゃんの姿が。

そう、今回もあるもの出し尽くしました。精一杯やりましたよ〜。
やり切った爽快感。
振り返ればそんな作業の1つ1つが「楽しかったよな〜」。
だから明るいんです。


五月


私がみみずくずを聴く理由

例えば、見てくれが好みだとか、将来性がありそうだからとか、恋人と別れた直後にたまたま近くに居て優しくしてくれたからとか、私達が人を好きになったりする時にはたいてい理由があって、それらはすべからくステレオタイプなものである。

ところがこの様なステレオタイプの理由から発生した恋愛感情で痛い目を見た人間ほど、「恋もに〜どめ〜なら〜、少しは〜じょおずに〜♪」と、15、6歳で達観した恋模様を唄いあげた明菜ちゃんばりに、セカンドラブは「理由は分かんないんだけど好き」とか「気がついたらなんか好きになってた」的な恋愛を選んだりする。

そしてこの恋に破れた暁には、またもや理由の明確な恋を探す。
この様な魔の連鎖を3回くらい繰り返すと、「恋もダーンスダーンスダーンスダンスほ〜ど、む〜ちゅ〜う〜になれないの、な〜んてねっ♪さ〜み〜しい〜♪」という状態に行き着くのである。

以上、五月の全くタメにならない恋愛講座でしたが、実は上記した2パターン以外にもう一つ、少女漫画や月9でおなじみのアレも忘れてはいけません。
そうです、「大嫌いから始まる恋」というヤツです。ケンカばかりしてたのに、気がついたら大好きになってた…(寒)、月9なんて9割このパターンと云っても過言ではないでしょう。


ところで五月の大好きなみみずくずの世間一般的な認知度はと云うと、その卓越しきった独自のスタイルによる弊害か、いわゆるメインストリームから半歩ずれたあまのじゃく的なものとして映っている様な気がしてならない。
他の追随を許さない勢いで、マイノリティ街道を突き進むその様は、ひどく孤高であり、シモキタあたりに雨後のタケノコの如く現れては1、2年で消える「繊細で骨太系バンド」や「眼鏡ノビタ逆ギレ系バンド」らとは比較にならないくらいの真摯な怨念を感じる。

そういえば以前レイナさんは自分の唄の事を「演歌だ」と云っていた。
艶歌と云った方がしっくりくるな、と思った。彼女は存在自体が艶っぽいのだ。

五月がまだほんの22、3歳の頃、レイナさんに恋愛相談めいたものをした事があった(笑)
高円寺の赤ちょうちんで力強く一言「まずヤってこい!」との有り難いお言葉を賜る頃には、明らかに人選ミスである事にうっすら気付き始めていたのだが、そのべっぴんさんっぷりに加え、タコわさが妙にしっくりくる艶っぽさに裏打ちされた名言は、五月の心の手帳に今もしっかり刻まれている(実践するかどうかはさておき)。

そうか、レイナさんがそうだからなのか、みみずくずの音楽に感じるこのチカラワザな感じは。
そうしてたぶん、五月がみみずくずを聴きたくなるのもたぶんこのチカラワザな部分なんだろう。理由を探し出すと、魔の連鎖にはまり込んでしまう。かといって手垢の付きまくった月9表現でみみずくずを形容しようとしたところで不可能なのだ。
  
みみずくずの音楽はけして複雑なものではない。複雑なだけのものであれば、ひも解いてしまえばそこで興味は尽きるのである。
みみずくずはギリギリの表面張力の状態からチカラワザをどんどん繰り出していく。予定調和ゼロ。展開が読めないから深入りする。まさに恋愛の如く!

そしてそんな我らが中毒患者に処方された新作「ひこうき雲e.p」。しっかりドーピングして、五月もまた逞しく恋をしようと思うのです(でもレイナさんには相談しません)。

*五月プロフィール*
1998年から2005年春まで、ハートバザール、ハッカというバンドに属し、国内、国外問わずドサ回る。
現在、ソロシンガーとして活動中。
本業のかたわら、文筆業や、映像作品参加など、活動の場を広げている。
身長148cm、猫とお菓子をこよなく愛す、読書の鬼です。

HP:http://satsukifolk.net/